「なぜ」で覚える英文法

英文法を「忘れないように覚える」ことを第一に考えたブログです。        受験に必要な文法事項を、丸暗記ではなく「理由を知る→知識がつながる→覚えられる」となるよう解説します。

受動態

使役動詞・知覚動詞の受動態でtoが付く理由(第5文型③)


使役動詞、知覚動詞は受動態になると動詞の原形の前にtoが付きます

 

第五文型15

 

 

◆使役動詞の受動態にtoが付く理由

 使役動詞makeは、かつて「make 目的語 to 動詞の原形」の形をとっていました。
 しかし、いつしかtoが消えてしまったのです。
 一説には、使役動詞のmakeは日常生活でも頻繁に使われる言葉であり、toが無くても意味が通じたからだと言われています。

【参考】なぜmakeにtoが付いていたのかは↓
使役動詞・知覚動詞でtoが付かない理由、getでtoが付く理由

 受動態の場合は、能動態より使われる場面も少ないので、昔のままtoが残ったと考えられます。



◆知覚動詞の
受動態にtoが付く理由

一方、知覚動詞は、昔からtoを付けず「知覚動詞 O 動詞の原形」の形で使われてきました。
 しかし、受動態になるとtoが付きます。

 これは、「toにこんな意味があるから」というわけではなく、toに続く語が動詞であることを表すためです。

She was seen to dress.

(彼女は服を着るところを見られた。)

 

↑では知覚動詞のwas seendressの間にtoが付いています。

もしtoがないとwas seen dress」となりdressが名詞(衣類)なのか動詞(服を着る)なのかわかりづらいです

dressにtoを付けることでdressが動詞であることを明確にしているのです



【参考】have、letが受動態になりにくい理由
使役動詞のmake、have、let、getは下記のとおり使い分けがされます。

使役動詞


なぜこのような使い分けが出てくるは下記のとおりです。

・make
「Oが~する状態を作り上げる(make)」
→「Oに(強制的に)~させる」


・have
「Oが~する状態を持つ(have)」
→「Oが当然の流れとして~する状態を持つ」

→「Oに(当然の役割として)~させる」


・let
「Oが~する状態を許可する(let)」
→「Oに(本人の意思通りに)~させる」

・get
「Oが~する状態を手に入れる(get)」
→「Oに働きかけることで~する状態を手に入れる」
→「Oに(説得して)~させる」


makeは受動態になると強制的に「~させられる」、getは説得されて「~させられる」という意味になり、自然な表現です。
そのため、使役動詞のmakeやgetは受動態にもなります。

一方、haveは受動態になると当然の役割で「~させられる」、letは本人の意思で「~させられる」という意味になり、不自然な表現になってしまいます
そのため、使役動詞のhaveやletは受動態になりくいのです。



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[感情の動詞・傷つく・生まれる]が受動態で表される理由 (受動態③)


◆受動態で使われる動詞

 感情を表す動詞(喜ぶ、失望する)、「傷つく」、「生まれる」は、be 過去分詞という受動態で表されますが、これにも理由があります。

 

 

・感情を表す動詞
 
be surprised at~:~に驚く
 be disappointed at~:~に失望する
 be pleased with~:~が気に入る
 be delighted with~:~に大喜びする
 be satisfied with~:~に満足する
 be interested in~:~に興味をもつ


 例 We were suprised at her marriage.
     私たちは彼女の結婚に驚かされた。
 
 感情は自分の外にある原因によって生じさせられるものです。日本語だと、喜ぶ、失望するなど自ら進んでその感情になったかのように自動詞で表現しますが、理屈的に考えると、感情とは自ら進んでその感情になるものでなく、自分ではコントロールできない外的な要因によって生じさせられるものです。例えば、 「大切な友人を亡くす」→悲しい思いをさせられるなどです。
 そのため、日本語の「驚く」は、英語では「驚かされる(be surprised)」と表され、感情を表す動詞は受身で表現されます。



・傷つく

be hurt

be injured

be wounded

※hurtはhurt(原形)-hurt(過去形)-hurt(過去分詞)です。


 例 He was hurt in a accident.
    彼は事故で怪我をした。

 「傷つく」が受動態で表されるのも、自分の体は自ら進んで傷つけるものではなく、自分以外の存在によって傷つけられるのが普通だからです。そのため、hurt「~に傷をつける」を受動態して、「傷つけられる→傷つく」となります。

 

・生まれる

 be born
※産む:bear-bore-born


 例 He was born in 1985.
    彼は1985年に生まれた。

 

 「生まれる」が受動態で表されるのも、赤ん坊は自ら進んで生まれるのではなく、両親によって生まれさせられるものだからです。そのため、be bornで「生まれさせられる→生まれる」となります。

 この辺の表現は、日本語より英語の方が論理的です。


⇒次は以前説明したto不定詞の補足です。
  willとbe going toを使い分ける理由(to不定詞④)



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byが[~によって]になる理由(受動態②)

 

◆be 過去分詞 by 人:人に~される

例 Hiroko is loved by everyone.

  ヒロコはみんなに愛されている。

 

 

 

●byは「そばに」

byのもともとの意味は「そばに」です。

受動態で「by+人」を使うと、「主語は~された、そのときそばに「人」がいた」となります。

そこから、byの後ろに置かれる「人」がその行為を行った犯人のように扱われ、「「人」によって」という意味になります。

 


 

●by「そばに」を使ったいくつかの表現

 

・stand by:~の味方をする

例 Doraemon always stands by me.

 ドラえもんはいつも私の味方になってくれる。

 

 stand(立つ) + by(そばに)

~のそばに立つ→~の味方をする

 

 

・little by little:少しずつ

 day by day:日に日に

 

 例 Japan's economy is recovering little by little.

 日本経済は少しずつ良くなってきている。

 

 little(少し) by(そばに) little(少し)

少しの固まり、そのそばに少し固まり

→少しずつ

 

 day(日) by(そばに) day(日)

1日の固まり、そのそばに1日の固まり

→1日単位で

→日に日に

 

 

・by:~までには

You must finish the work by 5 pm.

君はその仕事を午後5時までに終えなければならない。

 

 これは、「君はその仕事を終えなければいけない、そのそばに午後5時」が直接的な意味ですが、動作のそばに時間を設定することで、それを締切時間として表しています。

 

→「君はその仕事を終えなければいけない、そのそばに午後5時」

→「君はその仕事を終えなければいけない、午後5時までには」


 ほかにもbyを使う表現はたくさんありますが、いずれも「そばに」という意味から派生したものです。


⇒次は、受動態で使われる動詞
 感情の動詞・「傷つく」「生まれる」が受動態で表される理由 (受動態③)


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[be 過去分詞]が受動態、[have 過去分詞]が現在完了になる理由(受動態①)


◆be 過去分詞 by 人:人に~される

例 Hiroko is liked by everyone.

 ヒロコはみんなに好かれている。

 

 

●be 過去分詞が受動態になる理由

 be動詞の本来の意味は「存在する」です。

 例えば、シェイクスピアの『ハムレット』の"To be, or not to be."「生きるべきか、死ぬべきか」は「存在するべきか、存在しないべきか」を意訳したものです。

  ちなみに、beが「イコール」を意味するとも言われる理由は、「主語 be ~」を「主語は~な状態で存在する」と訳さなくても、主語は存在するのが当たり前なので、「主語は~な状態だ(主語=~な状態)」と訳すからです。


 一方、過去分詞は、過去形(~した)と形容詞(~な状態)をかち持つであり、日本語にすると「~した状態(完了)」もしくは「~された状態(受身)」です。

過去分詞


 これを組み合わせた「be 過去分詞」は、現在では受身の意味だけですが、もともとは①(一部の自動詞※に限り)「~し終えた状態で存在する(完了)」、②「~された状態で存在する(受動態)」の2つの意味を持っていました。

 しかし、①「~し終えた状態(完了)」の意味は、ほとんどの動詞では「have 過去分詞」で表されており、完了は全てhave 過去分詞、受身はbe 過去分詞としたほうが意味が明確になるため、18世紀に入るころには「be 過去分詞」の完了の意味は「have 過去分詞」に吸収されました。
 その結果、
「be 過去分詞」には受身の意味だけが残りました。

 

 受動態8

※一部の動詞とは、変移動詞と呼ばれるもので、具体的には化(grow)、動(go、come)などを表す自動詞のことです。

その名残として、↓のような文では、be 過去分詞なのに完了を意味します。

 

例 She is gone.(彼女は行ってしまった)



●have過去分詞に受身の意味がない理由

 「be 過去分詞」に完了と受身の意味があったことを思うと、なぜ「have 過去分詞」には受身の意味がないのでしょうか。


 例 I have finished my homework.
   私は宿題を終えました。

 

 実は、今の現在完了「have 過去分詞」は、もともと「have 目的語 過去分詞」という形であり、その形では①完了と②受身の意味がありました。


受動態9

 ①完了:Sが[目的語を~した状態(完了)]を持っている
 例 I have my homework finished.
          目的語   過去分詞

    私は宿題を終えた状態を持っている。
  =私は宿題を終えている。
   (宿題を終えたのは私(主語Ⅰ))


 ②受身:Sが[目的語が~された状態(受身)]を持っている

 例 I have my room cleaned everyday.
       目的語   過去分詞

        私は毎日部屋が掃除された状態を持っている。
  =私は毎日部屋を掃除してもらっている。
   (掃除をするのは私(主語Ⅰ)以外の誰か)


 このうち①完了は、主語が「~した状態」になるよう行為を行っています。つまり、主語にとっての動詞は、haveと過去分詞の動作です。そのため、過去分詞は、目的語の後ではなく、より動詞の位置に近づくようhaveの直後に置かれるようになりました

現在完了15


 一方、②受身は、「~された状態」にするのが主語以外なので、過去分詞はそのまま目的語の後ろに置かれる状態で残りました。

これは、現在でも使役のhaveとして残っています

 

have 目的語 過去分詞

 =目的語が~された状態を手に入れる

 

 ①使役:目的語を~してもらう

  例 I had my room cleaned.

    私は部屋を掃除してもらった。

 

 ②被害:目的語が~される

  例 I had my money stolen.

        私はお金を盗まれた。

受動態12


◆まとめ
 このように、過去分詞は受身と完了の意味を持っており、かつてはbeとの組み合わせでも、haveとの組み合わせでもそれぞれ受身と完了の意味を持っていました。
 しかし、時代を下るにつれて、「be 過去分詞」は受動態、「have 過去分詞」は現在完了という棲み分けがされるようになりました。

受動態10


⇒次はby「~によって」
 byが[~によって]になる理由(受動態②)


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自己紹介

kenny

しがないアラサー団体職員。
休みになれば寝てばかり、家事をすればいい加減なズボラ男です。
言葉の理解や記憶の構造に興味があって、大学院まで認知心理学をやっていました。
ご質問については受け付けておりません。