◆使役動詞、知覚(知覚・思う系)動詞
 使役動詞・知覚動詞では、目的語の後に「動詞の原形」を置くことができます。
 言い換えると、「to 動詞の原形」にはなりません
 (getだけtoが付きますがこの理由も後で説明します)


第五文型20
 


 一方、下記のような動詞では、動詞の原形の前にtoを付けます。


第五文型21



 このtoが付くか付かないかの違いは↓のような違いがあります。

V O   動詞の原形:Oが~するのをVする
V O to 動詞の原形:Oが~することへ向かうようVする


 
なぜこのような違いがあるのでしょう。
 このtoはto不定詞のtoですが、to不定詞はもともと前置詞のto「~へ(向かう)」からできたもので、「to 動詞の原形」で「~することへ向かう」という意味を表しました。
 そのため、「V O to 動詞の原形」で、「Oを~することへ向かうようVする(説得する、忠告するなど)」という意味になります。
 では、使役動詞には「Oを~することへ向かわせる」というイメージはないのでしょうか。


◆使役動詞でtoが付かない理由

 使役動詞は「Oに~させる」という意味であり、思いっきり「Oにこれからその動作へ向かわせる」というイメージがあります。
 つまり、動詞の原形の前にtoが付いても不思議ではありません


 それでもtoが付かないのは、make、have 、letそれぞれに理由があります。

 

 

・make

 makeの基本的な意味は「作る」です。

 そのため、「make O 動詞の原形」は、「Oが~する状態を作り上げる」→「Oに(強制的に)~させる」という意味になります。

 

例:The coach made the players run.

   コーチは選手たちを走らせた。

 

 また、makeは強制的に「~させる」という意味なので、toの持つ「~することへ向かわせる」という感覚があります。そのため、かつては動詞の原形の前にtoを付けて「make O to 動詞の原形」という使われ方もしていました。
 なぜtoが消えたのかについては、1つにはmakeは日常生活でよく使われる使役動詞だったからだと考えられています。日本語でも頻繁に使われる言葉は略語になるように、makeも頻繁に使われる言葉でありtoがなくても意味は通じるため、あるときからtoは消えてしまったと考えられます。

 

 

・have

haveの基本的な意味は「持つ」です。

 そのため「have O 動詞の原形」は、「Oが~する状態を持つ→当然の流れとしてOが~する状態を持つ」→「Oに(当然の役割として)~させる」という意味になります。

 

例:I had a repairman fix the air-conditioner.

  私は修理人にエアコンを修理させた。

 

 当然の役割としてやらせるので、あえてtoを付けて「~することへ向かわせる」という「Oをある状態へ(to)動かす」イメージがないためtoが付きません。

 

 

・let

 letの基本的な意味は「許可する」です。

 ちなみに、Let’s go.(行こう)のLet’s(~しましょう)は、Let us(私たちに~することを許可してくれ)を省略したものです。

そのため「let O動詞の原形」は、「Oが~するのを許可する」→「Oに(本人の意思通りに)~させる」という意味になります。

 

例:Father  let me drive his car.

  父は私が父の車を運転するのを許してくれた。

 

 haveと同じように、あえてtoを付けて「~することへ向かわせる」という動かすようなイメージがないため、動詞の原形の前にtoが付きません。

 

 

getにtoが付く理由

 getは動詞の原形の前にtoが付くため、文法書によっては使役動詞と扱わないこともありますが、「get O to 動詞の原形」で「Oに~させる」という使役を表します。

 

例:I got him to stop smoking.

  私は彼にタバコをやめさせた。

 

 getの基本的な意味は「手に入れる」です。
 そのため、「get O to 動詞の原形」は「Oに働きかけることで~する状態を手に入れる」→「Oに(説得して)~させる」という意味になります。

 

 getが他の使役動詞と違ってtoを付けるのは、説得して「~することへ向かわせる」という動かすようなイメージがあるからです。
 そして、使役のmakeほど頻繁に使われるわけではないので、toが消えることなく現在に至っています。



◆知覚動詞でtoを使わない理由

 
 知覚動詞は使役動詞と同じように、動詞の原形の前にtoを付けません。


例:I saw the boy fall down.

  私はその男の子が転ぶのを見た。


 
 これは、知覚動詞に「to 動詞の原形」の「~することへ向かう」というイメージがないからです。
 知覚動詞は「Oが~するのを見る」や「Oが~することを思う」という意味であり、そもそも「Oを~することへ向かうようVする」というイメージはありません。


 そもそもなぜ動詞の原形を使うのかは↓

【参考】使役動詞や知覚動詞で動詞の原形を使う理由



⇒次は使役動詞、知覚動詞が受動態になったときに動詞の原形の前にtoが付く理由です。
 使役動詞・知覚動詞の受動態でtoが付く理由

 
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